子どもがペットを欲しいと言い出した

「子どもがペットを飼いたいと言い出した」というのは よく見られる光景です。ペットとなる動物と接することは、子どもにとって命の尊さを学ぶ良い経験になるかもしれません。
親としてはそれを叶えてあげたくなるものですが、わが子の普段の言動を考えると、そのうち飽きてしまって、結局自分が世話することになると予想もできます。
今回はそんな不安を子どもたちは払拭することはできるのでしょうか。

子どもがペットを欲しいといってきたら

ペットが欲しいといってきたら頭ごなしにダメといってはいけません。ペットを欲しいことが悪いことと誤解を与えてしまうからです。
まずは命に対する責任の重さを両親の経験から説明してあげましょう。それでもなお欲しいというのであれば、その子どもだけではなく、家族全員が「本当に欲しいのか」を話し合う時間を設けるようにしてください。
そして、親はペットを飼った後のことを考えなくてはいけません。つまり、お金、暮らし、教育といった観点です。

ペットを飼う費用について

ペットを飼うにあたって考えたいのが、どれだけの費用がかかるかということです。子どもによってはお世話だけではなく貯めていたお年玉を使ってでも食い下がってくる場合もあります。
実際にかかるおおよその費用を伝えることも大切になってきます。

ペットを飼う時の初期費用

ペットショップで購入する場合の費用相場は、犬は10~30万円程度、猫は10~20万程度かかるのが一般的です。種類によってはさらに高額となります。
譲渡の場合、ペット自体の代金はかかりませんが、ワクチン代など譲渡費用が3~6万円程度必要です。
他にも必要に応じてフード、食器、ペット用トイレ、クレート、サークルなどのグッズを揃えておきたいところ。これらをあわせるとペットの購入代金を除いて5~6万円程度が目安になります。
さらに、去勢手術を行う場合、犬は1万5,000~2万円、猫は1万~1万5、000円。避妊手術だと犬は2万5,000~3万円、猫は2万~2万5,000円程度。必ずかかるお金ではありませんが、妊娠・出産を望まない場合、手術を行うケースが増えています。

ペットにかかる年間の費用

ペットを飼う上で必要になるランニングコストについても知っておきましょう。アニコム損害保険会社の調査によると犬の場合30万6,801円、猫は16万974円となっています。
犬は猫の2倍の費用がかかっていますが、シャンプー・カット・トリミング代の比率が高く、犬は定期的なお手入れが必要なためです。また、しつけやトレーニング料、屋外で遊べる施設は、猫はほとんどかかりませんが、犬は数千円から数万円かかっています。
一方、食費に関してほとんど差はありません。
病気やケガはいつなってしまうかわかりません。もしも病気やケガをしてしまった場合の医療費(治療費)は2~5万円ほどかかります。
人間であれば健康保険制度があるので3割負担で済みますが、ペットの場合、かかった医療費は全額自己担です。また、動物病院は自由診療なので、思いがけず高額な医療費がかかってしまうこともあるのです。

子どもはちゃんとお世話してくれる?

「絶対に最後までお世話するから!」というのは、ペットを飼いたいとせがむ子どもの常套句ですね。その言葉を信じていいのか、悩むのではないでしょうか。実際、ペットを飼いたいと子どもにせがまれた場合、本当にお世話するのでしょうか。
多くの子どもは成長・進学するにつれて、興味が他に移ったり、部活やアルバイトなどで忙しくなったりとペットにばかり構っていられないようです。仕方ないことではありますが、子どもがお世話できるように家族が協力するといった工夫が必要になります。

ペットを飼うことになったら

ペットと子供

話し合いの結果、ペットを飼うことになった場合、子どもにとってどのような影響やメリットがあるのでしょうか。

豊かな感情を育む

ペットはとてもかわいらしく、身近で接していると笑顔になってしまいますよね。ペットも愛情をもって接することで、相応の愛情で応えてくれます。尻尾を振って感情表現をする犬はもちろん、猫も飼い主に対して愛情を示してくれるため、子どもが情緒豊かに育つ手助けとなってくれるでしょう。イギリスのリヴァプール大学の研究によると、子どもの情緒はペットを飼うことで安定し、知的能力や社会的なスキルを上昇させる可能性があるそうです。

コミュニケーション能力の向上

ペットと接したり、お世話したりするには、ペットをよく見て、気配りしなければなりません。ペットがどうしたら喜ぶのか、何をしたら嫌がるのか考えるようになると、他人と円滑にコミュニケーションを取れるようになります。

命の大切さを知ることができる

大抵のペットは人間と比べて寿命が短く、犬や猫でも平均10~15年ほど。非常に残念ですが、いつかペットの死を経験します。愛情を注いだペットが死んでしまうことはショックで悲しい出来事です。しかし、子どもはこの経験によって命はいつか終わることを学びます。この悲しさを乗り越えた時には、命はいつか終わりを迎えるから1日1日を大事にしようという非常に重要な教訓を胸に刻むことができるのです。

健康で過ごすことができる

犬を飼った場合、散歩がつきものです。散歩は犬にとって運動不足解消による健康維持や刺激による脳の活性化に効果があり欠かせないものです。散歩は犬だけではなく飼い主にもメリットがあります。犬と散歩することで適度に体を動かすことができますし、日光を浴びることで、成長に欠かせないビタミンDの生成を促す効果が期待できます。

愛情ホルモンが分泌される

動物に触れると心が癒される経験をしたことはないでしょうか。これは動物に触れることでオキシトシンというホルモンが分泌されるためです。
オキシトシンは愛情ホルモンとも呼ばれ、分泌されると心拍が安定し高いリラックス状態になることがわかっています。ペットに触れることで愛情をはぐくみストレスに強い心を持つことができます。

ペットを飼う上での注意点

ハムスター

ペットを飼う上でメリットだけではなく注意点についてもご紹介します。

ペットはおもちゃではないと教える

ペットはおもちゃではなく、生き物として寿命があり、犬や猫にも「こわい」「甘えたい」といった感情があることを教えてあげましょう。

衛生面に気を付ける

ペットを飼うことでアレルギーが発症する場合があります。部屋の掃除や衣服の洗濯、ペットの毛をこまめに手入れし、空気清浄機を使うなど対策が必要です。子どもとペットが快適に過ごせるよう、衛生面に気を付ける必要があります。

ケガをする可能性がある

ペットはじゃれているつもりでも噛まれたり、引っかかれたりすることで、子どもがケガをしてしまう恐れがあります。このような事態はペットをしっかりしつけることで回避できることが大半ですが、全く起きないという保証はありません。
ペットを飼育する際、子どもに危害が及ぶ可能性があることも教えるようにしましょう。

親が子どもの頃の感覚でペットを飼ってはいけない

現在の動物保護法には、動物の所有者は、動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(終生飼養)が責務であると明記されています。ペットの虐待・遺棄については「罰金100万円」であったものが「懲役1年または100万円の罰金」に変更されるなど罰則も引き上げられました。
死ぬまで責任を面倒みるというのはペットを飼う上で基本ではありますが、我々が子どものころ見受けられた雑な飼い方はできなくなりました。子どもにもそのことを教えてあげてください。

子どもがペットの世話しなくなったら

ペットの世話をしない様子を見て怒りたくもなりますが、それはNG。そこはグッとこらえてお世話を促すよう優しく声をかけることが効果的です。

子どもを𠮟る

叱ればその場では言うことを聞いてくれるかもしれませんが、ペットと嫌々で接することになり、世話することが自発から義務に変わってしまいます。
義務となった状態で世話することはペットにとって悲しい思いをさせることになりかねません。

子どもが気づくまでそのままにする

子どもに対するしつけの一環としてみれば、一つの手段ですが、ペットの命が危険にさらされることもあるので、放置することは避けてください。
もしかすると世話をしないと死んでしまうということよりも、小さな命を粗末に扱ってもいいというメッセージを伝えかねません。
幼いころにそのような体験から成長してしまうと、自分以外の命を粗末にしてしまう大人になってしまうかもしれないと考えると恐ろしいことです。

親が世話をする

諦めて親が世話をすると、子どもは結局親がやってくれると思ってしまいます。また、子どもとペットをつなぐ絆が生まれず、犬の場合子どもになつかないといったこともあり、余計に世話をしなくなってしまいます。
やらないからとそのままにするのではなく、誰かに代わりを頼むということを徹底させましょう。

ペットの世話をやる気にさせるコツ

子どもがペットの世話をサボり気味になった場合、一緒にやろうと声をかけてあげましょう。押し付けられるという感覚を持つと、子供のやる気が削がれてしまいます。
「お腹が空いているかも」「そろそろトイレを掃除しないとね」という形で提案して、世話するタイミングを知らせるだけでも、子どもの姿勢を変えることは可能です。
掃除をした後に「きれいにしたから気持ちよさそうだね」と声をかければ、ペットのためになったと自覚します。子どもにとっても達成感が得られ、積極的に世話をしてくれるはずです。

子どもが「ペットを飼いたい!」と言い出したのをきっかけにペットを飼い始めた家庭は多いのではないでしょうか。
多くの家庭はキチンと今でも世話をしているのですが、一部では世話をしなくなったという声もあります。
ペットを飼う場合、安易に判断せずデメリットもしっかり話し合い「それでも飼いたいのか」を改めて確認するといいかもしれません。